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『全國部落調査』は積極的に公開・復刊すべきである

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(この文書は編集者Dddの「私論」であり、一部の編集者が助言や意見を記したものです。私論には広く共有されている考え方もあれば、少数派の見解もあります。内容の是非については慎重に検討してください。)

私以外の同和地区Wikiの編集者の皆様は、部落解放同盟が同和地区を公開したことや、「部落地名総鑑」を出版していたことに異を唱えていらっしゃいます。しかし、恐縮ながらも、私は部落解放同盟を擁護したいと思います。部落解放同盟こそ率先して『全國部落調査』を復刊すべきでした。そもそも部落解放同盟であっても、鳥取ループ氏であっても、誰しも『全國部落調査』は公開して良いものと捉えます。むしろ「部落差別の解消の為」にこそ、積極的に公開すべきです。その理由を説明します。

鳥取ループ氏が『全國部落調査』の復刻版を出版しようとして部落解放同盟が差し止めた一連の裁判で、部落解放同盟は以下のように主張しています。

  • 全国の部落を網羅した『全國部落調査』は差別的な用途にしか使用できない。
  • 一方、府県内に限定して網羅していれば研究用途に使用できる。

しかし、全国の部落を網羅した資料だからこそ隠れた部落差別を可視化できる事例があります。

それは原発問題です。

原発の一部は被差別部落に隣接して立地していることが研究者の間では知られています。それを差別的政策として批判している学者もいます。しかし、原発の立地を決定した為政者が本当に部落に対する「差別的意図」があったたかどうかは、一つの府県のみで判断し難い問題です。たまたま部落に隣接していただけかもしれません。

しかし、複数の府県で原発が部落に隣接していたとなると話は別です。『解放新聞』の部落探訪記によると、「福島県以北をのぞくとほぼ、すべての原発所在地、もしくは建設工事中のところに、さらに計画地に、被差別部落が必ずといってよいほどあることが、わかってきた」とあります。

『解放新聞』の部落探訪記 福井の原発銀座と被差別部落

複数の府県で、しかもその殆どの原発が部落に隣接していたとなると偶然では説明できません。為政者の「差別的意図」により、立地が決定されていたことが窺えます。

このような全国的な調査では「あらかじめ」部落の場所を知っておかなければ、差別の可視化はできなくなってしまいます。解放同盟は全国の部落を「あらかじめ」知っていた為に、差別的意図を指摘できたのです。部落解放同盟が『全國部落調査』か、それに匹敵する資料を持っていたからこそ可能な調査だったと言えるでしょう。

では、「福島以北」の原発立地はどうでしょうか。東北にはほとんど部落は存在しません。

しかし、やはり「差別」はあるのです。150年前の「戊辰戦争」で敗戦した幕府軍側の藩に原発が集中して立地されているのです。これは2013年に内田樹氏がブログで指摘しています。[1]

内田樹氏が指摘する「賊軍地域に原発集中」は本当か?│NEWSポストセブン

思想家の内田樹氏は2013年4月、ブログで「白熱したインタビュー」の内容としてこんな自身の発言を紹介している。

〈戊辰戦争ですよ!  決まってるじゃないですか。戊辰戦争で、奥羽越列藩同盟【注】が賊軍になって、それからあと150年間、中央政府によって有形無形の差別を受けてきたからですよ〉 【注:戊辰戦争中に、東北・北越の諸藩が結んだ反維新政府による軍事同盟】

 これは文化祭で東北の研究を発表する高校生からインタビューを受けたときの発言である。内田氏は東京をはじめ、関東で消費される電力が福島など、関東以外の地域にある原発から供給されることを「賊軍差別」の表れだと断言し、さらには原発立地比率が戊辰戦争で勝った側と負けた側には「歴然とした差がある」、つまり原発の多くは賊軍とされた地域に立地されていると主張した。

一見すると、内田氏は陰謀論を唱えているように見えるかもしれません。しかし、調査の結果を見れば一目瞭然です。

安易には言えないが、原発が立地しているところは戊辰戦争や西南戦争の敗者が多いのは確かだ | タクミくん二次創作SSブログ(Station後)

内田樹の Tweet に「原発があるのは戊辰戦争のときの賊軍側の藩ばかり、という話……」とあった

そうだなぁ……と思いながら、Google してみれば、まとめて調べてあるサイトがあった

その後、内田樹は「すべての政治的選択には150年くらいの「前史」があると思った方がいいようです。」とも Tweet している

●珠洲原発(関電・中電・北陸電)=石川県・加賀藩。加賀藩主・前田慶寧(よしやす)は薩長迎撃のために進軍していたが、徳川方敗走の報に、あわててて、進軍兵を呼び戻し、朝廷方に尽くすと表明した。反・薩長。その後寝返り派。

●島根原発(中国電力)=松江藩。戊辰戦争の時に幕府側についていた。朝敵藩。

●福島原発(東京電力)=会津藩。言わずと知れた幕府側最大の親藩。

●伊方原発(四国電力)=愛媛(今治藩)。親藩松平家の城下町。鳥羽伏見の戦役にも幕府軍として出兵した。

●福井原発、敦賀原発(関西電力)=福井藩。徳川一門であり、幕府側の主力藩。

●浜岡原発(中部電力)静岡県。駿河藩(静岡藩)。幕府側。

●柏崎・刈羽(東京電力)=新潟・新発田藩、長岡藩。奥羽越・諸藩同盟を結成した幕府側の盟主藩。

●女川原発(東北電力)=宮城県・仙台藩。12代将軍家慶から一字を賜った第13代仙台藩主慶邦は東北最大の幕府支援の雄藩の藩主。奥羽越列藩同盟の総督。

●川内原発(九州電力)=薩摩藩(新政府、その後反乱、西南戦争で敗北)

●玄海原発(九州電力)=唐津藩(佐幕)

●上関原発( 中国電力)=長州藩(新政府)。2011年3月14日、東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故の発生を受け、山口県知事二井関成は臨時の記者会見で、「(福島の事故に対する)これからの国の対応を十分に見極めて、極めて慎重に対応を進めてもらいたい」と語り、中国電力に対して事実上の埋立工事の中止を要請

 以上のように、原発が立地する地域は押しなべて明治維新の「反・薩長藩」

 青森県に至ってはこれが露骨。原燃・核再処理施設計画が集中する下北半島は旧南部藩。奥羽越列藩同盟。一方、いちはやく新政府に恭順の意を示した津軽藩(青森・津軽地方)に原発のゲの字もない。日本は今にいたるも「明治維新」を引きずっているという証左

 最後まで薩長に抵抗した南部藩や会津からの移封藩「斗南藩」を抱える下北はいまだに「薩長・明治新政府」から見下されているといえる

東海村にある東海第二発電所は水戸、もちろん賊である

とにかく、九州・四国・北海道以外……本州の原発は、そういうことなのだ

すなわち、原発の立地は「部落差別」と「賊軍差別」により意思決定されており、本州の一部原発はそれを兼ね合わせた「複合差別」を受けていたと判明したのです。勿論内田氏は部落研究者でも人権論者でもありませんが、「旧幕府軍の藩は誰でも入手可能な情報だった為」に「賊軍差別」に気付けたとは言えるでしょう。逆に部落解放同盟に限らず人権団体がこの事実に気付かなかったことは恥ずべきことです。東北に部落は少ないからと人権問題の研究対象にしていなかったのではないでしょうか。

「部落差別」による原発の立地は、為政者が『全國部落調査』のような資料を用いた可能性も考えられます。元々差別解消の為に政府が実態調査した資料が逆に差別に利用されたことは十分有り得る話です。

では、差別利用の防止の為に『全國部落調査』のような資料を非公開にすべきでしょうか?それこそ為政者の思う壺です。為政者が差別的意図で資料を利用しても、一般市民や部落民は「誰も部落を知らない為」に差別されていることに気付くことすらできなくなります。しかし「情報公開請求」や、資料の復刊・再販を通して、一般市民や部落民も何処が部落かを知る事ができるようになれば、内田樹氏のように、為政者の「差別的意図」を指摘できるようになります。

部落解放同盟は「差別解消の目的」がある場合や、「研究者」が利用する場合は部落を列挙した資料は公開や利用が可能と明示しています。

しかし、「差別解消の目的」の場合に限定すると、「原発の立地が部落に隣接していることを明らかにする文章を付記した場合」にしか『全國部落調査』は公開できなくなります。果たして『全國部落調査』を入手しただけで、それだけのことに気付ける人がどれ程いるでしょうか?

一方、「研究者」が利用する場合に限定すると、今度はその研究者の視点でしか差別的意図が見抜けなくなります。おそらく『全國部落調査』を入手しただろう研究者の一人が原発の立地と部落の関係を見抜けたから告発できたのでしょうが、研究者以外の一般人にも公開していればより早く、場合によっては計画段階で指摘できていたかもしれません。誰もに公開されている旧幕府軍の藩と原発の関係に気付くのですら150年もかかっているのですから。

「見えない差別を可視化する」為には、より多くの人に部落の場所を知ってもらい、各部落に共通する課題を見出してもらう必要があるのです。逆に部落の場所すら分からない人が部落差別を見抜くなど不可能です。

「部落地名総鑑」事件以降、部落を列挙した書籍を部落解放同盟は差別図書として取り締まってきました。勿論、部落を列挙した資料はかつて就職差別に利用されたように、差別に利用されるおそれはあります。しかし、一部の者が差別に利用したことを被差別者や第三者が見抜けない状況と、見抜ける状況とではどちらが差別解消に貢献していると言えるでしょうか。勿論後者です。

ところで、「大阪市同和問題研究室」が発刊した『大阪市同和事業史』という資料があります。本書には大阪府内の全ての同和地区が列挙されています。本書は行政が実態調査の為に発刊しており、さらに大阪府内の同和地区に限定して公開している為、部落解放同盟によると差別資料に該当しません。

しかし、本書は『全國部落調査』を参照して作成されたことは明白です。「大阪市同和問題研究室」[2]が複製した『全國部落調査』が部落解放研究所(現在の部落解放・人権研究所)に所蔵されていることが『部落問題文献目録』により明らかとなっている為です。『全國部落調査』が差別資料とすると、それを参照して同和地区を列挙した『大阪市同和事業史』も差別資料でなければ辻褄が合いません。そうではなく、『大阪市同和事業史』と同様に、『全國部落調査』も差別資料ではないと考える方が自然です。[3]

そもそも、鳥取ループ氏が『全國部落調査』を復刊しようとしたことを差別だとして部落解放同盟が出版を差し止めた中、既に「大阪市同和問題研究室」が『全國部落調査』を復刊しており、それは部落解放同盟が設立した部落解放・人権研究所にて閲覧できるという状況は不可思議でしかありません。復刊自体は差別ではない、と部落解放同盟も内心では認めているのではないでしょうか。

『全國部落調査』を積極的に公開・復刊すべき理由は以上です。

注釈

  1. 戊辰戦争以後の「賊差差別」は教育や医療にも及んでいることを漫画『エンゼルバンク』にて著者の三田紀房氏(岩手県出身)が指摘している。三田氏は漫画『ドラゴン桜』の著者としても有名である。 エンゼルバンク14巻のなかなかためになる記述 その1 | 人にやさしい住まいとは?田舎で国産の「自然塗料・接着剤」をつくる大奮闘記 - 楽天ブログ

    さて、エンゼルバンクの14巻、実は最終号なのですが、この14巻には結構ためになることがいくつか書かれています。 今日はその1を紹介します。

    13巻からの続きで将来的な日本の医師不足について言及している場面で、東京近郊である千葉と埼玉で医師不足になり、救急患者はたらい回しになる可能性があるとか。 関東は人口が多いから社会基盤の整備が進んでいるかと思ったら、実は逆で社会基盤の充実度は「西高東低」なんだとか。

    国造りのときに権力者が力を入れる分野は3つ。 「軍・教育・医療」 戊辰戦争で勝った明治新政府もその3点に力を注いだ。

    結果、戊辰戦争に勝った西日本には多くの教育機関が配置された。

    九州の現在の人口は約1300万人だが、医学部の数は10。 医者の数も十分足りている。

    逆に戊辰戦争に負けた関東と東北への教育機関の配置は意図的に後回しになったとか。 (たしかに東北の教育機関の数は少ないし、医者も格段に少ない)

  2. 部落解放・人権研究所が管理・作成しているインターネット版の『部落問題・人権辞典』は以下のように説明している。 *大阪市 - 部落問題・人権事典

    55年には,同和事業を適正かつ効果的に展開するために研究調査等を実施する必要があるとして大阪市同和問題研究室【おおさかしどうわもんだいけんきゅうしつ】が開設された。初代理事長は北神正(大阪市民生局長)、ほか4理事(*原田伴彦、*岡本良一、*栗須喜一郎、*小林茂)により構成。機関誌『大阪の同和問題』(1958-67)、研究誌『同和問題研究』(1957-58)のほか、*『摂津役人村文書』、『大阪市同和事業史』など多数刊行。

    原田伴彦氏は元部落解放研究所理事長、栗須喜一郎氏は元大阪市同和事業促進協議会会長、小林茂氏は元部落解放研究所名誉理事である。

    大阪市同和事業促進協議会は、やはり大阪市内の同和地区をすべて列挙した『40年の歩み』『50年のあゆみ』を出版している。

  3. 「大阪市同和問題研究室」が発刊した『大阪市同和事業史』には続編として『大阪市同和事業続編』があり、編者は「部落解放研究所」(現在の部落解放・人権研究所)、発行所は「大阪市同和対策部」である。すなわち部落解放同盟と行政が共同で作成している。